ラベンダーの話

おかむらさき

学名 

 Lavandula angustifolia 'Okamurasaki'

ラベンダーの種が日本に入ってきたのは1937(昭和12)年のことで、曽田香料がラベンダーオイルの国産化を目指してフランスのプロバンスから入手したものが始まりです。

 その後戦争の混乱期を乗り越え試験栽培が続けられ、富良野地方に導入されたのは1948(昭和23年)のことになります、その後優良品種の選定作業が続けられ、早咲き「ようてい」と遅咲き「おかむらさき」が選定され命名されたのが1963(昭和38)年で、最初に種子が日本に到着してから実に26年を要したそうです。

 

濃紫早咲き

学名 

 Lavandula angustifolia 'Noshi Hayazaki'

ラベンダーの語源

ラベンダーの語源としては各説ありますが有力なのが次の2点です 

「洗う」という意味のラテン語 lavo lavare から来ているという説と、青みを帯びたを意味するラテン語livere に由来するという説があります。

 ラベンダーオイルは非常に高価であったことと古代ローマ人が入浴に用いていたという証拠がないことなどから、後者の方かなという気もしますが、皆さんはどちらだと思いますか?

 どちらにしてもラベンダーの色と香りに心を癒されるのは昔も今も変わりません

花もいわ

 

 1963年の優良品種指定から4年後の1967年に優良品種とされたのが中咲きの「花もいわ」です。蕾は紫がかった白色ですが花が咲くと薄い紫色になり香りは爽やかな感じがします。香気成分のエステル含有量は低いのですが、そのせいで香りが強すぎないのかも。観賞用として入手したい種類の一つです。

 上の写真は花もいわのつぼみと開花後です。色の違いがわかりますよね

ラベンダーの色

ラベンダーの色は語源がラテン語のlivere(青みを帯びた)であるという説があるとおり紫色が代表色ですが、もちろん例外もあります。写真のように白色やピンク色をしたものもあり品種名ははっきりしませんがいずれもangustifoliaに属するものでしょう

ラベンダーのガクと花

ラベンダーはシソ科の低木で春に伸び始める一本の茎からたくさんのガク片をつけ花を咲かせます。(総状花序) もともと精油を取ることを目的としているため、花を咲かせ始める瞬間を捉え刈り取ることが良いとされていますが、ポプリを作るにもこの時期が一番良いようです。花が咲いた状態のものは結婚式のブーケ等にも使用され北海道での結婚式では非常に人気があるようです。写真はおかむらさきのガクの状態と開花したものを花束にしたものです。

ラベンダーの種類

富良野地方で栽培されているラベンダーはスパイカ(SPICA)ラベンダーのグループです。このグループにはフランスで栽培が始められたのにもかかわらずなぜかイングリッシュラベンダー(トゥルーラベンダー)と呼ばれるL.angusutifolia、スパイクラベンダーL.latiforia、そしてウーリーラベンダーL.lanata が含まれます。 

L.angustifoliaL.latifoliaとの交配種がラバンジン(Lavandin)です

 うさぎの耳のような花弁状の裸苞葉をつけるもの(写真)はストエカス(STOECHAS)グループに属するものでイタリアンラベンダー、フレンチラベンダー、スパニッシュラベンダーと呼ばれていますがこの辺になると混乱してきますね

 

挿し木

ラベンダーを増やすには一般的には挿し木の手法が取られますが、これは種子からだと交配種になり真性が保たれないためです。ただ真性種の香りが良いのかブレンド種の香りが良いのかは別の話で、ワインのブルゴーニュ産単品種が良いのかボルドーのブレンドが良いのかそれぞれの良さがあるように、ラベンダーの香りもそれぞれの良さがあります。香りの話は次回にするとして、今回は挿し木の話です。

 富良野地方ではカラマツの新芽が色づく頃に挿し木をするのが良いとされています。写真のように株から採取した新芽をマルチを施した土に挿し木します。挿し木したものから毛根が出て来て根付いて行くのですが、そのまま越冬させ翌年に植え替えをし苗として育てていきます。

ラベンダーの香り

ラベンダー精油の成分のほとんどが酢酸リナリルとリナロールからなります。それに少量のいろいろな成分が混ざり込み多様な香りを生み出しています。それらの成分の構成比に影響を及ぼすのが種類であり、土壌であり、気候でありそして蒸留法などです。スパイカラベンダーグループのうちL.angustifoliaは酢酸リナリルとリナロールの香りが特徴的でL.latifoliaはカンファー臭(ローズマリー等の香り)がやや強く感じられます。そしてそれらの交配種がLavandinになる訳です。富良野地方で栽培されているラベンダーの種類はその香りの素晴らしいものが選定されており来訪者を魅了するのは当然のことなのですね。(写真はラバンジン)

蒸溜

ラベンダーの香りを楽しむにはポプリの他に精油を抽出する方法があります。もともと精油を採取するのが目的で日本に導入されたのでそれが本来の姿なのですが、合成香料に取って代わられ今では一部でしか見られません。蒸溜には直接蒸溜と水蒸気蒸溜の方法がありますが、富良野地方では以前はドラム缶にラベンダーと水を入れ火にかける直接蒸溜が行われていたとラベンダー農家さんに聞きました。家庭で楽しむ程度ならば簡易蒸溜器を用いるのが良いでしょう。ただし蒸留水は結構取れますが精油はほんのわずかしか抽出されません。写真は1Kgのラベンダーに2リットルの水を使い蒸溜しているものです。圧力釜の上に冷却装置が載っているものですが、圧力釜の中を細工して水蒸気蒸留ができるようにしました。ラベンダーはオカムラサキを使っています。

アロマテラピー

エッセンシャルオイルや芳香による療法をアロマテラピーと言いますが、ラベンダーは様々な効用があるとされており特にリラクセーション効果が大とされています。

 その香りに加え、大自然の景色を眺めながら一面の紫色に包まれて緩やかな時の流れに身を委ね、無心にハサミを動かしラベンダーの花を摘み取るという作業が、その相乗効果により非常に大きな心の癒しを与えてくれます。

 中富良野町が多くの来訪者に支持される理由の一つにこのことが上げられるのには異存がないことでしょう(写真は十勝岳連峰の麓に広がる中富良野町の田園風景とラベンダーに包まれながら摘み取りを行う様子)

無農薬栽培

農薬散布の目的は除草、除虫、除菌ですが他の方法でその目的を達成することが出来るのであれば農薬を使う必要はないわけです。真性ラベンダーはスパイクラベンダーに比べ病気に対する抵抗力が高いとされています。またラベンダーの葉にはカンファー成分が含まれているため虫もあまりつきません。カンファーとは日本名で樟脳のことなので虫除け成分であることはわかります。ラベンダーは蒸れに非常に弱いのと土壌の栄養分ロスを防ぐためには除草作業は欠かせませんが、株間を少し広めに取り

小型機械を入れ、残った部分を人力により除草してやることによりこの問題も解決できます。農薬を使用しない畑にはミミズが増え土壌をよくしてくれますしカエルが虫を食べてくれます。何より安全に人が直接触れることができるわけです。(写真は除草機械として使用しているミニ耕運機)

越冬

 

 北海道のラベンダーは雪の下で越冬することが余儀なくされます。これはラベンダーにとっては逆に良いことで、雪の布団にくるまることにより根を凍害から守ることができます。花が終わって剪定された木は夏から秋にかけて新しい芽を増やし翌年の春に何倍にもなって枝を伸ばし始めます。雪が降る前に凍害を受けるかどうか、積雪が多いかどうか、雪が溶けて適度な雨を受けながらなおかつ日照時間が適度にあるかどうかでその年の花の状態が大きく変わります。心配の種は尽きませんが自然に任せるしかありません。写真は雪に覆われた畑と融雪後の畑そして越冬後の新芽の状態です。